パネルディスカッション「クラフトビールを大いに語ろう!」

パネルディスカッション ビールの知識

どうも、麦酒男です。

去る 1月30日、日本で一番、ビールの飲める街・渋谷において
「クラフトビール大研究」と銘打ったイベントが開催されました。

昨日お届けした第一部に続き、今回は第二部の
パネルディスカッションの模様をお届けします。

パネルディスカッション「クラフトビールを大いに語ろう!」は
藤原ヒロユキさん進行の元、8人のパネラーで行われました。
パネラーは以下の8名。そうそうたるメンバーです。

ベアード・ブライアン氏(ベアードビール代表取締役)
鈴木真也氏(「ベイ・ブルーイング横浜」代表兼醸造責任者)
能村夏丘氏(高円寺「高円寺麦酒工房」オーナー)
田中徹氏(虎ノ門「クラフトビアマーケット」オーナー)
高橋雄一郎氏(高円寺「萬感」オーナー)
小畑昌司氏(洗足「PANGAEA」オーナー)
堀輝也氏(ラフ・インターナショナル有限会社代表取締役)
ライ・ベヴィル氏(ジャパンビアタイムズ編集長)

パネルディスカッション

事前打ち合わせのまったく無かった様子の第二部ですが、
藤原さんの見事な仕切りで始まりました。

==ここから==

テーマ:ぶっちゃけ、今年はクラフトビールが来るの?
鈴木真也氏(「ベイ・ブルーイング横浜」代表兼醸造責任者)
僕が免許をとりましたから、来ますよ! 他にもアウトサイダーブルーイングや
川崎にもブリマーブルーイングなど、三つの醸造所が一気に立ち上がる。
他の醸造所からの独立という形で、経験者がやるってのは強いのではないかと思います。
こういう流れはもっと増えて欲しいです。

小畑昌司氏(洗足「PANGAEA」オーナー)
自分の場合は、作り出したきっかけが不純で… まずはビールが詳しくなりたい、という
ところからスタートしています。以前は自分のお店に海外のビールを入れていましたが、
海外のビールは輸送の間に悪くなる、それを売るのが耐えられない、と思うようになりました。
日本には地ビールがあるので、それを出していましたが、次第に地ビールを扱うお店が
増えてきて、個性がなくなってきたので、自分で造ってみればと云われてやってみたんです。
造ってみて思うのは、オンリーワンだという自信はあるが、手探りで始めているので…
こんな流れでビールを作る人が出てきたら面白い、と思います。

能村夏丘氏(高円寺「高円寺麦酒工房」オーナー)
私はまったくの素人から始めました。ブルーパブという業態を2年前に知って、
これは自分の街にあったらいいな、やるにはどうしたらいいのか、ということで始めました。
マニアックなことをなるべく辞めようって思っていて、どんどん飲みやすい、入りやすい、
街のパンやさんのようになりたい、と思ってやっています。
パンは、焼きたてのパンも買うし、スーパーで袋に入ったパンも買いますよね。
自分は焼きたてをパンを提供するように、ビールを飲めるようにしたいと思い、作りました。

ベアード・ブライアン氏(ベアードビール代表取締役)
2000年から始めているが、小売業でいいビールを扱いたいという人が増えていきました。
ビールを作る、広めるというのは、仕事が多くてとても大変です。
そんな中で、一貫性のある美味しいビールを造るところは少ないです。
ビールは多様性があり、美味しいビールは複雑な味わいがあって素晴らしいものです。
我々、クラフトブルワリーの使命はそれを広めることだと思っています。

田中徹氏(虎ノ門「クラフトビアマーケット」オーナー)
今後、お店はそんなに増えないんじゃないかと思います。
なぜなら、クラフトビールの設備を作れる人が少ないから。
本来はエンジニアが設計するのがいいのに、そこまでたどり着ける人が少ないんじゃないかと。
新橋界隈のお客さんは他のお店でのビールを知っています。界隈の素晴らしいお店を
いろいろと見ていると、今のビアバーはビールだけではなく、内装や料理のレベルも
上げて行かなくてはならないのではないかと思います。

高橋雄一郎氏(高円寺「萬感」オーナー)
僕もあまり増えないと思います。カルチャーとして、まだ一般的ではないと感じています。

堀輝也氏(ラフ・インターナショナル有限会社代表取締役)
通販を5年やっていて、ボトルビールの売り上げが毎年20%くらい伸びています。
傾向を見ていると、近所では買えないので買ってくれているという感じでしょうか。
ただ、そこまで増えないんじゃないかな、とは思います。

ライ・ベヴィル氏(ジャパンビアタイムズ編集長)
クラフトビールを取り扱うお店が増える気がします。
クラフトビアバーではなく、既存の飲食店が、クラフトビールを仕入れるようになるのでは…

タカバシ雑感
クラフトビールを広めるために消費者の声がもっと必要にもなるかも、と思いました。
既存の飲食店に対して、クラフトビールを置いてほしい、という要望をメーカーだけでなく
消費者からも上げることで実現していくのかな、と思いました。そう考えた時に、
Twitterなどを使い、ユーザーに声を上げさせたサンクトガーレンのやり方というのは、
すごいんだなぁ、と改めて関心するとともに、他のメーカーは、そういう活動が
できていないんだなぁ、ということもわかりました。

テーマ:サーバーの違いで味は変わるんですか?
鈴木真也氏(「ベイ・ブルーイング横浜」代表兼醸造責任者)
樽をつないだ初日はあまり変わらないと思います。サーバーには瞬冷と空冷がありますが、
瞬冷だと低い温度になってしまう、という欠点もあります。ただ、それよりもむしろ、
二日目以降に劣化していくのがよく分かります。酵母を濾過できないと明らかに変わります。

ベアード・ブライアン氏(ベアードビール代表取締役)
ビールによっても違います。大手メーカーでもこだわっているところはやっています。
本来、保存しておく場所の温度と飲む温度は同じであるべきです。努力をすれば、少ないコストで
実現する方法はあります。なによりも努力が大事です。

能村夏丘氏(高円寺「高円寺麦酒工房」オーナー)
ビールは劣化しやすいものと、しにくいものがあります。作り手として思うことですが、
クラフトビールを、ある程度広めていくには、瞬冷で売れるビールを開発するのも
メーカーの使命だと思います。ハードルを下げることも必要です。

小畑昌司氏(洗足「PANGAEA」オーナー)
作り手としては最善の状態で出して欲しいですが、売り手としては、
そこまでハードルをあげられると困る… そういう意味では、ボトルで売るのもいいですよね。
まずは、いろんな人の目をクラフトビールに向けることが大切だと思っています。
専門店だけでは駄目で、もっと専門知識を得る場所、機会が増えたらいいなぁ、と思います。

タカバシ雑感
たしかに、いろいろなお店にクラフトビールがあるのってのは、むしろビールじゃなくても
選択の幅ができるのは贅沢だと思います。ただ、それには知識や努力が必要なわけで、
それをどこまでハードルを下げたり、個人の負担を減らせるか、ってのが課題かな、と。
一定のお客さんが見込めるお店であれば、どのビールを仕入れるかをみんなで選んで
そのブルワリーと組むようなことで、お客さんのロイヤリティを高めることも
できるんじゃないかな、なんてことも思いました。Twitterをうまく活用している
飲食店(たとえば豚組、ソンタナ、ブルックリンダイナーなど)は、
どのビールを入れるか、Twitterなどでアンケートを取って、
実際にそのビールをラインナップしていましたね。

パネルディスカッション

テーマ:ぶっちゃけ、儲かっているんですか?
ライ・ベヴィル氏(ジャパンビアタイムズ編集長)
これを聞くと、みんな、儲かってない、といいます。

ベアード・ブライアン氏(ベアードビール代表取締役)
地ビールを作って儲かっている会社ってないのでは?先行投資が続きますし、
好きじゃないとできません。ポパイの青木さんは、クラフトビールが
そこまでメジャーじゃないところから今のようになりました。
時間がかかるし、誠実さが必要です。ただ、最近は少し追い風が吹いている気します。
ベアードビールは、これからもタップルームを増やして行こうと思っています。

田中徹氏(虎ノ門「クラフトビアマーケット」オーナー)
原価率から云うと… ドリンクの売り上げの割合で云うと、
全体の15%が大手ビールで、ワインなどが15%、クラフトビールだけでは
儲かりません。儲かるような仕組みにするのは難しいと思います。

高橋雄一郎氏(高円寺「萬感」オーナー)
飲食店としてクラフトビールは魅力的だと思います。ただ、お店を始めるのではなく、
クラフトビールがあることでニュースになる。自分もいくつかもメディアに取り上げられて、
さらに、今もここでお話している、という状況があります。
日本全国で作っていて、季節感、地方感があるので、
売る時にストーリーがつけやすいし、売りやすい。
原価率で見たらよくないが、全体の工夫があれば、儲からない商材ではないと思います。

小畑昌司氏(洗足「PANGAEA」オーナー)
自分はコストを下げるために作り始めました。ビールだけを売ってるだけでは儲からないです。
ビールの原価率だけを見るのではなく、全体の利益を見なくては…。
チェーン展開をしているお店で、免許を取って自分たちの
ビールを造るようになったら面白いと思います。

ライ・ベヴィル氏(ジャパンビアタイムズ編集長)
潰れているかどうかで考えたらいいかもしれませんね。
他の業態とくらべてクラフトビールを扱うお店で潰れているところは少ないと思います。
儲からないかもしれないけど、魅力があるから、お客さんが集まるような傾向があるのでは?

タカバシ雑感
儲かっている飲食店もあると思いますが、笑いが止まらないほど、
ということはないと思います。業界全体で言えば、
いろいろなPR活動や施策をして、好調(に見える)なサンクトガーレンさんですら、
すご~く一生懸命で、大変そうに見受けられます。
つまり、儲けられるのかもしれないけど、
決して楽なことはない業界なんだろうなぁ、と推測します。

テーマ:クラフトビールの価値と面白さを教えてください。
能村夏丘氏(高円寺「高円寺麦酒工房」オーナー)
作り手として、こんなに楽しいものはない、と思っています。
一生かかっても極められないです。
売り手としては、こんなに売りやすい、楽しい商材はありません。

高橋雄一郎氏(高円寺「萬感」オーナー)
手間がかかりますが… こんなことを云ったら怒られるかもしれないけど、
なんだかわかんないけど、面白いやつです。あとはストーリーが乗せやすい、幅がある、
お店の力が問われる商材だと思います。思いつくなら、いろんな遊び方ができますね。

小畑昌司氏(洗足「PANGAEA」オーナー)
味の幅が、他のお酒に比べて圧倒的に多いのがビールです。前菜からデザートまで、
どんな料理にもあうビールが必ずあります! それが魅力です。

堀輝也氏(ラフ・インターナショナル有限会社代表取締役)
消費者がより近いのがいいですね!

ベアード・ブライアン氏(ベアードビール代表取締役)
多様性! そして、クラフトという意味の通り、
職人が自分の納得するまでやっている。それがかっこいいです。

田中徹氏(虎ノ門「クラフトビアマーケット」オーナー)
女性に気に入ってもらえるということでしょうか。クラフトビールを飲むと
大手さんのビールとのギャップに感動してもらえるのがうれしいです。

鈴木真也氏(「ベイ・ブルーイング横浜」代表兼醸造責任者)
味をいくらでも作れる、ってことでしょうか。今年は年間50種類くらい造りたいと思っています。
卸してるお店さん同士でも被らないビールを作れるのが魅力です。多様性が生まれたらいいな。

ライ・ベヴィル氏(ジャパンビアタイムズ編集長)
ビールは社会的な飲み物です。それによって、話が、友だちが生まれる、それが魅力です!

藤原ヒロユキ氏
自分の中で大切なのは表現… クラフトビールは作り手の個性がハッキリ出ている。
それに対して、大手のビールはチームプレイですね。たとえるなら、オーナーシェフのお店と
ファミレスのような感じ。表現が好きなので、クラフトビールが好き。
作り手はアーティストになっていくのかも…

タカバシ雑感
僕もビールの魅力は、多様性と介在する人が魅力だと思っています。
もちろん多様性の中には大手メーカーのビールもありますね。
一期一会という言葉があったり、八百万の神がいる日本ですから、
クラフトビールに価値を感じるマインドってのは大きいような気もしています。
自分の好みが、そして最高にうまいと感動できるビールが必ずある、
そうやって毎日楽しく飲むのが面白さじゃないかと思いました。

==ここまで==

パネラー8人に対して、ディスカッションの時間が60分弱と
かなり短い時間だったので、燃え上がらないうちに終わってしまった印象が拭えない、
若干、不完全燃焼なパネルディスカッションでした。
運営側がパネラーの名前や店名を何度も間違えるなど、
ありえない感じでスタートしたので、もし次回があるなら、
そのあたりも含め、改善してほしいなぁ、と思いました。
(ディスカッションのテーマをあらかじめ募集しておいたり、
懇親会でのビールのサーブの方法やレコメンデーションも
もっと考えられるのではないかと思いました)

懇親会

この後に懇親会があり、ベアードさんをはじめとするブルワーさんや
いつもお店に立っていて忙しそうで話せない方などなど、
いろいろな方とお話する機会に恵まれました。
ある意味で、この懇親会だけでもすごく贅沢な時間でしたし、
今回はビール同様、集まった人こそが最大の価値だったのだと思いました。

ビールは楽しいお酒、そして人を結びつけるものだと
再認識できた今回のイベント… いろいろと思うところはありましたが、
ぜひまたこんな風に、ビールを愛する人たちが集まる機会があればと思いますし、
作ってみたいと思いました。参加された皆さん、お疲れ様でした!

 
※パネルディスカッション「クラフトビールを大いに語ろう!」については
クラフトビール東京おすすめガイドにて完全再現版がご覧いただけます。

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