ビールから離れていくもの

麦酒雑記

どうも、麦酒男です。

「ビール離れ」若者を取り込め! 「苦くない」「オシャレ」を打ち出す、
なんて記事がJ-Castにありました。
http://www.j-cast.com/2008/08/19025269.html

ビールを敬遠する若者が増えているというという
ビールメーカー各社の焦りがおかしな商品を
生み出しているような気がします。

キリンのグラス

「うまみだけ、雑味なし」とうたっているクリアアサヒ
2008年9月17日より発売になる「KIRIN Smooth」など、
その商品開発は目先の売り上げだけを考えている気がします。
このままでは現場の士気も下がり、さらにコンビニ等の棚確保を
優先する消費者不在の商品開発が進んでしまうのではないか、と
不安を感じています。そのうちビアガーデンなんて名ばかりの
チューハイガーデンやC.C.レモンホールなんてのが
できてしまうのではないかと…。

「ビールは苦いし、いらない」という消費者は
チューハイやカクテル、ソフトドリンクを飲んでいます。
その消費者に対してどうして「よし、甘いビールを出そう」とか
「苦くないビールを造ろう」となってしまうのでしょうか。

消費者が求めているものは、おいしいお酒やドリンクであって
甘くないビールを求めているわけではないはずです。
さらにビールメーカー各社はそのターゲットに向けて
「おいしいお酒」とその時間や空間を提供するのが使命だと思います。

どこからこうなってしまったのか、どこから見直せばいいのか、
まったく見当がつきませんが、負のスパイラルにハマっていく
気がしてなりません。3つのポイントから考えてみたいと思います。

1. マーケティング調査
2. コンビニの棚
3. 商品開発


1. マーケティング調査

若者の「ビール離れ」というのは、どうやって調べたのでしょうか。
これはおそらくアンケート調査とコンビニでの利用実態調査から
引き出した結果であろうと思います。
渋谷の街角などでよくおばちゃんに「アンケートお願いします」などと
声をかけられます。このおばちゃんについていくと
ビールやお酒の試飲調査だったりすることもありまして、
こういう街角調査でいろいろとデータを取っていったりするわけです。
「ビールは苦いし、あまり飲まない」と若者は答えます。
そしてチューハイやカクテルなら甘いし飲みやすい、という
結果が導き出されるのです。で、ここからが変なところで、
その結果が「どんなビールなら飲みたいか」というデータに
変わってしまうのです。
そしてカクテルみたいなビールの開発が始まります。
が、しかし、このアンケートに答えた若者が飲みたいと思うのは、
カクテル風ビールなのか、それともカクテルなのか…。
ビールメーカーはいったい何と戦っているんだ!?


2. コンビニの棚(たな)

缶ビールが一番売れる場所、それはコンビニや
ディスカウントストアではないかと思います。
特にコンビニでは、陳列棚のどこに並べてもらえるか、が
売り上げの大きなポイントとなります。
では、どうしたら他のメーカーのビールよりも
目立つ場所に置いてもらえるのか…
それはなによりも新商品です。
商品力ではなく宣伝力、に近いものがあると思います。
新商品でTVでCMがバンバンやっているものは
やはり目立つ場所に置いておかねば、ということです。
その結果、季節ごとのビールや発泡酒、
変り種の商品をとにかく開発・発売するようになりました。
ビールだけの話ではなく、ソフトドリンクも一緒ですね。
時々、季節限定のビールでもおいしいものがありますが、
そういうものに出会っても、また来年まで、
もしかしたらずっと飲めないわけです。
情緒的、といえばいいのかもしれませんが、
本当に消えていったビールはとても多くあります。


3. 商品開発

さて、あなたがビールの開発担当者だったら
上記の状況は喜ばしいことでしょうか。
マーケッターや代理店からは
「カクテルみたいなビールを造れ」だとか
「とにかく季節ごとに商品を出してくれ」等の要求があります。
ビール好きに受け入れられるビールを造りたくても、
彼らが持ってくるのは「甘い・飲みやすい」のが
正義だと言わんばかりのデータです。
そして、そのうちに今までビールを開発していた
技術者たちは引退し、「甘い・飲みやすい」ビールを
造っていた技術者たちが多くを占めるようになります。

麦酒男の雑感

ビールの未来は明るい、とはいえない気がしています。
よくわからないビールや発泡酒が発売される一方で、
プレミアム・モルツやエーデルピルスのような
とてもこだわったビールが売れているという事実もあります。
もう一方で「うまみだけ、雑味なし」のクリアアサヒも
売れているという事実もあります。
そしてその中間のビールが売れない、まさしく二極化です。
そう考えると時代の流れなのかもしれませんが、
この流れの行き着く先はどこなのでしょうか。

酔いたいのであれば、強いお酒を飲めばいいのだし、
喉が渇いているのであれば、水なり麦茶を飲めばいい。
僕は「ビールを買う人は酔っ払いたいのではなく、
楽しい時間を過ごしたいのだ」という思い込みがあります。
それを前提にすると、味うんぬんよりも
楽しい時間をどう提供できるか、提案できるか、
それこそが今ビールメーカーが取り組まなければいけない
開発なのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

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